東電EPの売却問題

2020年は東京電力エナジーパートナー(以下、東電EP)の経営問題がいよいよ本格化する年となりそうです。

東電グループ内では東電EPの2020年度の経常損失が巨額にのぼると予想されており、2021年度以降もさらに大きな損失発生が確実視されています。秋本展秀社長はこの状況を東京電力ホールディングス(以下、東電HD)に伝えている模様ですが、東電HDは「経営不在」と断じており、双方の溝は深まる一方です。

なぜこのようなことになったのでしょうか?

東電EPの収支には電源固定費の動向が大きく影響します。3.11以降、同社は経産省の強い意向により、福島復興電源としてIGCC調達、IPP電源募集、JERA電源の購入継続を余儀なくされました。2020年度以降、これら新設電源の運転開始がいよいよ本格化するため、固定費の支払いが大幅に増加します。今後もJERAの横須賀火力をはじめとした新設電源の運転開始が控えており、支払いは膨らむ一方です。

周知のとおり、電力需要が伸び悩む中、3.11後に経産省は永田町への訴求やJERA創設に向けたカンフル剤として、十分に吟味せず電源建設を強行しました。東電EPはその購入を強要されてます。さらに2015年度以降、電気料金の価格破壊を行い、傷口を深めてしまいました。これらのツケを負担させられているのが、現在の東電EPなのです。

金融機関との融資契約の関係上、東電グループがこれを放置することはできません。

さしあたり、2020年度は東電EPが支払っている柏崎刈羽原子力や原電東海第二の基本料金を東電HDが肩代わりすることで、グループ内収支をやりくりする以外に適当な方策はないと思われます。

しかし抜本的な方策として、経産省は東電EPの売却を考えています。

売却先としてはJXTG、大阪ガス、中部電力、JERA、NTTグループ、ソフトバンクグループなどが考えられますが、いずれにせよ、東電EPが抱えている電源契約を継承するか否かが焦点となります。買手が誰であれ、稼働しない東京電力・日本原電の原子力発電所の購入契約を承継するはずはありません。とはいえ、これら電源負担を承継しないならば、そもそも東電EP売却は実益のない行為になってしまいます。

難しい判断ですが、それでも経産省は「売却」を断行するでしょう。「再編」「統合」は官僚が自らの成果を訴求する最高の手段だからです。

2020年度には次の「総合特別事業計画」が発表されます。また容量市場の取引が開始されるため、電源固定費の価格が市場で決定される微妙な時期でもあります。このような条件下で、官僚に東電EP売却を持ち込まれた買手側がどのような判断を下すのか、その結果、過剰となった電源固定費を誰が負担することになるのか、関係者は固唾をのんで見守っているのです。