電気事業法改正2020(その2) 料金規制

託送料金には収入上限規制(いわゆるレベニューキャップ方式)が導入されます。電気料金規制は旧来の総括原価・公正報酬主義から大きく枠組みが変わります。これに応じて小売料金(具体的には経過措置料金)も託送料金の転嫁が(値上げを含めて)届出により可能となります(ともに2023年4月1日施行)。

託送料金では「収入上限」と「託送約款」それぞれに規制がかけられます。一般送配電事業者が省令で定められた期間ごとに収入上限を算定し、経産大臣の承認を受けることになります。大臣はこの上限に対して変更命令権限を有します。また収入上限の範囲内で託送料金を算定しますが、料金は認可制(ただし上限収入内での変更は値上げを含めて届出制)となります。

問題なのは、まず「承認」とはどの程度の重みをもつのか、という点です。例えば、現在の託送約款料金審査要領に類する指針を作成し、さらに監視等委員会が収入上限の算定に強く関与することとなると、現在の託送料金の審査・認可プロセスと実質的に変わりないものとなります。

次いで重要なのは収入上限の算定をどの程度の頻度で行うのか、という点です。毎年このプロセスを繰り返すのか、それとも3~5年ごとか、によって一般送配電事業者の負担は大きく異なります。現行制度下で一般送配電事業者は託送料金を「変えない自由」を有しています。しかし新制度は託送料金変更の有無に関わらず、定められた期間ごとに収入上限の承認を得る義務が課せられ、したがって実質的に規制強化となる点に留意する必要があります(現時点では5年に1度に算定を行うと考えられています)。

このように託送料金の収入上限規制は運用次第でかなり厳しいものになることが予想されるため、レベニューキャップ方式により規制が軽減されたと判断するべきでなく、今後の制度設計を十分見極める必要があります。

他方、小売事業者の経過措置約款では、託送料金の変化に応じた届出変更(いわゆる「パススルー」)が値上げを含めて可能となりました。

ここでは2つの点を指摘したいと思います。まず経過措置料金は全面自由化と相容れない制度であり、本来ならばその存続自体をもっと深く議論すべきだと思います。次いで託送料金のパススルーを認めるとしても料金技術的に基本料金・従量料金ごとの託送料金の変動を一律に適用することは困難で、厳密に転嫁(パススルー)と判断できるケースは意外と限定される可能性がある点です。

 料金規制については2020,2021年度にわたり詳細検討を積み上げていき、2022年度に収入上限の算定が行われます。今後、2023年度の施行までの議論を注視する必要があります