コロナウイルスと電力需要(6月15日時点)

東京都の外出自粛要請から約3か月が経過し、コロナ禍が電力需要に与える影響が徐々に明らかになってきました。

私たちは当初から、操業・営業停止に伴う工場・オフィス等の需要減と、在宅時間長期化に伴う家庭用需要の増加とを比較し、どちらがより強い影響をもつのか、に注目してきましたが、両者の相対関係が判明しつつあります。

まずは全国の需要動向をみてみましょう。グラフの赤線は本年3月1日以降の需要、青線は昨年同時期の需要です。

電力量 - JPN

グラフから判断できることは以下の通りです。

・4月末までは天候要因に左右されつつも、おおむね昨年並みか少し昨年を下回る需要水準で推移していた(4月前年比96.4%)。

・しかし5月の連休以降、明確に前年を下回る水準で推移した(5月前年比90.8%)。

・6月に入り、暑さのせいもあり、特に8日の週以降、前年を上回る水準となっている(6月1~15日前年比99.2%)。

以上のことから、空調が暖房から冷房にシフトする5月に需要減が著しかったことが観て取れます。すなわち一般家庭の在宅時間が長期化しても、この間は空調需要が発生しないため、工場・オフィスの操業停止が総需要に最も強く影響したものと考えられます。

このような状況は各エリアごとの需要動向を観ると、より明確になります。例えば北海道エリアは5月の需要減が穏やか(96.2%)で、他方、中部エリアは製造業のウエイトが高いため、5月に大幅な需要減(86.4%)となっています。

電力量 - HK 電力量 - TH 電力量 - TK 電力量 - CB 電力量 - HR 電力量 - KS 電力量 - CG 電力量 - SH 電力量 - Q 電力量 - O

以上の点から、現段階で以下の判断を下しても差し支えないものと考えられます。

・コロナ禍による需要減は天候要因によって相殺しうる範囲に留まっていること。

・(冷暖房を除く)電力需要の減少は5月(全国で90.8%)で概ね底打ちした可能性があること。

当然のことですが、この間の人々の行動は随時、変化していて、今後の予断を許しません。

ただ大きな焦点は、製造業の回復がいつか、第二波・第三波が発生するのか、ワクチン開発・普及はいつか、の3点に絞られてきたように感じられます。。