プール制とは何か

2020年度冬季の需給ひっ迫以降、電力需給システムにプール制を導入すべき、との議論が活発になってます。需給ひっ迫は今後も中長期的に継続する可能性があり、このため経産省は2023年の通常国会でプール制を実現するための電気事業法改正を目指しているといわれています。

プール制とは主としてアメリカのPJMをはじめとするISO(Independent System Operator)やRTO(Regional System Operator)で導入された電力の需給・取引システムを指します。

厳密な定義があるわけではありませんが、プール制(強制プール)とは以下の2つの原則により、最適な経済性と安定的な系統運用を実現するシステムです(以下ではわかり易さを重視して、端的な例を挙げます)。

1 全ての卸電力は系統運用者が運営する取引所を経た取引を義務付けられる。

2 系統運用者が系統・需給の管理・運用に対して強い権限を有している。

ポイントは、系統運用者が取引所の運営者になることです。これにより系統運用者は全ての電源の指値を管理することとなり、その結果、メリットオーダーを実現するのみならず、系統制約が発生した際の出力調整の優先順位(いわゆる混雑管理)を決定することができます。

また系統運用者は送変電設備の工事計画に伴う停止スケジュールを承認・否認する権限を有し、加えて発電事業者の定期点検等のスケジュール管理や給電指令を行うことで、系統信頼度を維持することが可能となります。

かりにプール制が導入された場合、日本ではどのような変化が起きるのでしょうか?

まず卸電力取引の運営者がOCCTO(広域的運営推進機関)に一本化されると考えられます。現在、電力取引は、容量市場=OCCTO、需給調整市場=送配電網協議会、卸電力取引市場=JEPX(日本卸電力取引所)の3つに大別されますが、これら全ての市場運営をOCCTOに統一する方向になると予想されます。

また現在、各地域の旧一般送配電事業者が担っている基幹・地方系統工事の計画・管理や給電指令等の権限を相当程度、OCCTOに移行することが考えられ、電力会社の意志決定の主体性が徐々に失われる可能性があります。

OCCTOと送配電網協議会・旧一般送配電事業者・JEPX間の権限移行については、多くの調整があり、制度改正後の電力システムには、さまざまな態様が考えられます。しかし経産省が安定供給の確保を重視しているのに加え、電力会社の一部にもプール制を指向する傾向があります。電力需給システムが大きくプール制に移行し、ISOとしてのOCCTOの権限が今後、高まることは避けられないでしょう。