経過措置料金のあり方

経過措置料金とは?

経過措置料金のあり方が電力システム改革のテーマとなっています。

経過措置料金とは、2016年の電力市場完全自由化後も継続された、家庭用電力需要に対する規制料金を指します。本来、市場が自由化されたわけですから、料金規制は撤廃されるべきでした。

しかし経産省は自由化後も旧一般電気事業者(大手電力)の独占状態が継続する、との判断から、一般家庭を大手電力による「規制なき独占」の弊害から保護する、という建前で経過措置料金を継続したのです。これにより、自由化後も大手電力は、家庭用電気料金を自由に価格設定することが出来なくなりました。加えて経過措置料金の燃料費調整には上限が設定されているため、燃料価格の高騰時には、コスト転嫁に限界が生じる、という現象が発生してしまったのです。

果たして適切な規制だったのか?

そもそも市場を自由化する一方で、料金規制を継続するのは矛盾した政策といえるでしょう。自由化後に、独占の弊害から一般消費者を保護するのであれば、独禁法に委ねるのが本筋です(それが出来ないのであれば「自由化」しなければ良いのです)。にもかかわらず経過措置料金という料金規制を残した最大の理由は、経産省が自らの行政権限を公正取引委員会に手渡したくなかった点にあります。加えて「経過措置」という表現の通り、この規制は自由化後の暫定措置として導入されたものなのですが、9年が経過した現在でも、撤廃される気配はありません。電力自由化の主旨を踏まえれば、早急に撤廃するべきでしょう。

経過措置料金の何が問題なのか?

前述の通り、経過措置料金には燃料費調整の上限(料金算定時の1.5倍)が設けられています。このため2022年の化石燃料価格高騰時に、大手電力の経過措置料金は軒並み、この上限に到達してしまいました。この結果、コスト増に耐え切れず、大手電力7社が料金値上げを申請、約半年後に認可されるに至ったのです。この間、大手電力の財務体質が著しく毀損されたことに加え、新電力も悪影響を被りました。大手電力の経過措置料金が上限に達し、これを超過できなかったため、新電力が顧客を獲得できなくなったのです。

自由化の本来の目的である競争促進に対し、経過措置料金規制が大きな悪影響を与えてしまったわけです。このことの反省から、経過措置料金のあり方が今回のシステム改革のテーマとなったわけです。

秀逸な電力中央研究所の分析

以上の経緯は電力中央研究所の分析に実によくまとめられてます。極めて抑制の効いた文章で、客観的な数値に基づき、制度に詳しくない方にも分かりやすく記載された内容です。昨今はこのような重厚な分析を眼にすることがなくなりました。ぜひ、ご一読いただきたい内容です。

https://criepi.denken.or.jp/koho/management/20240930.html

 

 

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