電気事業法改正2020 (最終)真の狙い

今回の電気事業法改正の最大の眼目は、広域的運営推進機関(OCCTO)に新しく資金調達機能が与えられたことです。OCCTOは本来、自ら設備を建設することはなく、したがって多額の資金調達を必要としない組織でした。しかし今回、極めて強力な調達機能が与えられます。

具体的にみてみましょう。

1 OCCTO債の発行(改正法28条の52 第1項)

2 同債券に対する一般担保(同28条の52 第4項、5項)

3 OCCTO債務(借入金を含む)に対する政府保証(同28条の53)

資金調達機能を強化する目的は投資資金の確保です(当然のことです)。OCCTOの機能を考えると、ここでいう「投資」の対象は主に「会社間連系線」と考えてよいでしょう。つまり本来、一般送配電事業者が建設・保有すべき連系線の建設資金を確保するためOCCTOに資金調達機能を新たに持たせ、極めて強い信用力を与えたことが判ります。

詳細は割愛しますが、改正前の電事法下でも、OCCTOは一般送配電事業者の供給計画に対する事実上の変更命令権限を有しています。今回はこの権限に加え、OCCTO自身が政府保証を背景に設備資金を調達することが可能になったわけです。

OCCTOがこの資金を得て、自ら連系線を建設・保有するのか、それとも一般送配電事業者に貸し付けて建設させるのか、定かではありません。いずれにせよ極めて重要なことは、一般送配電事業が資金調達面で実質的な国有化プロセスに入り、このため自己決定能力を失う局面に入りつつあるということです(以前の特殊法人を想起すれば理解していただけるでしょう)。

かねてから一般送配電事業者は電力需要の構造的な低迷、一般担保の廃止(2025年)、流通設備の老朽化、再エネの偏在などにより、設備資金の調達に構造的な不安を抱えていました。このため一部の経営層には今回の措置を資金調達の不安を払拭するものとして歓迎する傾向すらあるようです。のみならず、官僚は将来、原子力の資金調達に同様の政府保証を与える構想を有している模様です。

広く知られている通り、電力は資金調達に鈍重な業界で、これらの措置の対価を十分理解できてないのでしょう。長く垂直統合の状態にあった電力業界は火力発電と販売を解体し、流通と原子力を実質的に国有化する、新たなステージに入ったといえるのです。