水野会長の構想
2019年4月よりJERAは東京電力・中部電力の火力電源を吸収し、両社の火力発電統合構想が本格的にスタートしました。
これに伴い、中部電力は旧東電側の火力電源を活用し、関東への小売販売を一気に拡大することを狙っていました。この構想の推進役は水野明久会長といわれています。そもそも中部電力がJERA参画を決めた最大の動機は関東の市場獲得による収益の大幅拡大です。水野会長はJERAの本格稼働によって、この狙いを実現できると考えていたようです。
卸供給の長期契約
しかし事態は思惑通りに進みませんでした。旧東電フュエル&パワーは電源ごとに東電エナジーパートナー(以下、東電EP)と長期間の卸供給契約を締結していました。この長期契約はJERAに承継される扱いとなっているため、中部電力はこれら電源を販売に活用することができないのです。
これに不満をいだいた水野会長は電力・ガス取引監視等委員会に対し、東電EPとの長期契約は不当である旨を主張したようです。
Tone Deaf!
さすがにこれは無理な注文でした。電気事業法は小売電気事業者に対し供給義務を課しており、小売供給の裏付けとなる電源の確保を要請しているわけですから、東電EPが火力電源の長期契約を締結しているのはむしろ当然の行為といえます。加えて、東京電力は発送分離を行っていますが、他の旧一般電気事業者は発販一体を継続しています。すなわち東電EPが水力・火力・原子力の電源と契約を結んでいるのは、いわば発販分離の結果であり、これを実現していない中部電力が異議をとなえるのはそもそも見当違いの振舞いでした。
結果的に、この要請は受け入れられませんでした。しかしこれで事態が収まるとは考えられません。火力発電の統合は中部電力にとって一里塚に過ぎず、関東の市場を獲得しなければ意義を失ってしまいます。
新電力(Fパワーと噂されています)に要請してまで東電EPの電源長期契約の不当性を訴え、また非常勤取締役の立場でJERA取締役会の議長をつとめる水野会長は関東進出に向けて相当な思いがあるはずで、次の一手を考えているはずです。