日経記事は経産省の積極リーク
6月13日の日経新聞朝刊一面に「経産省が太陽光・風力のFIT制度を終了し、入札制度へ変更する」との記事が掲載されました。記事内容・記載場所から経産官僚が記者に積極的にリークしたと判断できます。官僚が記者にリークする際、①省内で決定済みの政策をメディアを通じて宣言する場合(積極リーク)、②未決定の政策について世論の反応を確認する場合(観測リーク)とがあります。目的に応じて対象メディアや扱いを微妙に変えますが、日経一面トップという今回の扱いを見ると、本記事の内容は事実で「決定済み」と考えてよいでしょう。FIT制度は2020年の全面改正へ向け、記事内容に沿った制度変更が行われそうです。
事業用太陽光は入札価格を下限としたJEPX卸売りへ
2018年度下期の太陽光入札において最低落札価格が14.25円になり、その後、2019年度FIT事業用太陽光の買取単価が14円に下がりました。このことから経産省は太陽光に対し、補助金交付は行わず市場での自立を促す方策へ転換した、との受け止めが一般的でした。今回の措置はこの2018年度下期からの政策の流れに沿ったもので、十分予想できた内容といって差支えないでしょう。したがって完全に市場に委ね、JEPXでの卸売りに特化することも十分考えられたと思いますが、官僚の本音として規制権限を手放すのではなく、入札制度を適用し、落札価格を最低価格として保証する制度を選択したものと考えられます。
広域的運営推進機関はエリア内系統の物理的送電権検討へ
本措置に加えて「送電線の能力不足に対する手当てが必要」との記載が日経記事には記載されてます。九州電力の太陽光抑制措置や東京電力の千葉県内の送電容量不足を受けて、広域的運営推進機関では電源が系統容量を確保する仕組み(いわゆる物理的送電権)を検討することを6月11日に決定しています。このように広域機関の検討開始に合わせたタイミングの整合性にもリークの意図が感じられます。
さらに安くなる太陽光は完全自立へ
このような判断の背景には太陽光価格が14円をさらに下回り、10円台の競争力を有する事業用太陽光が出てきたことがあります。すでに太陽光価格は十分自立が可能な領域に入っており、政策に依存する事業者は退出を余儀なくされているのが実態です。10円台は系統電力価格(いわゆるグリッドパリティ)をはるかに下回る水準で、高圧業務用需要家を中心に、安価な施工力を背景とした自家消費目的の太陽光設置が続々と発生する状態となっています。太陽光のステージは次の段階に進んでおり、市場は既に自立しているため、今回の措置は政策の後追いといっても決して過言ではないのです。