電力広域的運営推進機関は10月25日、北海道ブラックアウトに関する中間報告をまとめました。この内容によると、9月6日のブラックアウトに至る経緯は下記の通りです。
3:08
苫東厚真2,4号機が停止(116万kW)
北本連系設備緊急受電
周波数低下による負荷遮断(1回目)(130万kW)
周波数低下による風力発電停止(17万kW)
送電線事故による道東停電(13万kW)
送電線事故による水力発電停止(37万kW)
3:09~3:11
中央給電指令所よりバランス停止中の水力・火力発電機に起動指令
北本受電最大に至る(57万kW)
3:20頃
苫東厚真1号機の出力低下
3:22頃
周波数低下による負荷遮断(2回目)(16万kW)
3:25頃
苫東厚真1号機停止
周波数低下による負荷遮断(3回目)(6万kW)
周波数低下による火力・水力発電停止
北本連系設備停止
北海道ブラックアウト
要約すると地震による直接の事故は以下の2点でした。
1 苫東厚真発電所の3基が停止(いわゆるN-3事象)
※但し、1号機は3:25に停止
2 送電線4回線事故が発生(N-4事象)、これに伴い水力発電が停止
これに対する設備的な対応は以下の2点でした。
1 北本連系設備は直ちに受電開始
※但し、他励式であるため、北海道内の交流電源喪失により停止
2 周波数低下による負荷遮断を3回実施
以上から、今回の事故は電源のN-3事象と系統のN-4事象が重複した極めて稀頻度の事象だったこと、北海道電力の対応は適切であり、広域的運営推進機関はが指摘している通り、不適切な点はなかったことの2点を、まずは指摘したいと思います。
ブラックアウト防止(または停電規模の抑制)のため、今冬の当面の対策として、広域的運営推進機関は北海道電力に対し、概ね、下記の3点を講じるよう要請しています。
1 負荷遮断量の追加(35万kW)
2 苫東厚真3基運転のため、京極揚水発電所の稼働等を前提とする
※今回の事故時、京極揚水発電所(20万kW×2基)は停止中。中間報告では仮に運転中であればブラックアウトは回避できた可能性が高い、と分析している。
3 需要の30%~35%を火力など運転可能な電源によりまかなう。
これらの指摘事項は今後、議論の対象となることでしょう。具体的には系統の健全性維持のための措置として、広域的運営推進機関にどこまでの権限を与えるのか、また送配電事業者に対し、対策に伴うコスト回収の権限をどこまで認めるのか、これらの議論を経ずに上記の要請を行っていることが、今後、大きな課題となると考えられます。
現在のアンシラリーサービスの在り方に対し、上記の再発防止策が大きな一石を投じたことは間違いないでしょう。この点については、改めて本HPでも検討したいと思います。