2018年度の太陽光FIT買取り価格(10kW以上)は18円/kWhとなりました。設置コストの低下、設備利用率の上昇を背景とした措置で、概ね、予想された水準です。
問題は中長期的な方向性です。
太陽光を含めた再生可能エネルギーの買取り単価は、国のエネルギー政策の方向性と深く関連します。政府のエネルギー情勢懇談会では2050年のエネルギー構成が議論されましたが、再生可能エネルギー・原子力・化石燃料のいずれを中心に据えるのか判然としない、との意見が噴出しています。
日本のエネルギー政策で最重視されるのは自給率の向上です。
したがって原子力・再生可能エネルギーのいずれかに推進の重点を置く、ということになりますが、現時点では明確に決めることはできない、したがって双方に重心を置かざるをえない、というのが政府の率直な判断でしょう。
原子力を準国産エネルギーと位置づけ、新増設・高稼働、原子燃料サイクルを実現することで自給率を向上させる、という目論見は崩れました。相次ぐ原子力発電所の廃炉決定・増設計画の停滞等をみると、2050年に原子力の発電量が震災前の水準を上回るとは考えにくいのが実態です。
原子力の停滞リスクを抱えて自給率向上を目指すのであれば、おのずと再生可能エネルギーが重要になります。太陽光のFIT買取り価格は、自給率向上と原子力の停滞という国のエネルギー政策の目標と現実の中で決定されるという見方が正しいでしょう。
前回、太陽光発電は、電力会社の限界電源を考えると約9円/kWhと等価との試算を記しました。単純に考えればFIT買取り価格は9円まで下がるということになります。
しかし国は目先の価格比較で政策決定を行うわけではありません。
まず化石燃料の対価は海外へ流出しますが、FITによる再生可能エネルギーの対価は国内に留まります。したがって国全体の経済効果は、再生可能エネルギーの普及拡大の方が高いことを重視する可能性があります。
また化石燃料価格は大きく変動しますが、FIT価格は10~20年間固定されます。歴史的にみて、化石燃料の価格変動により発電単価が20円/kWhを上回ったことは珍しいことではありません。再生可能エネルギーの価格安定性も決して無視できない要素でしょう。
太陽光のFIT買取り価格は国のエネルギー政策の大局から位置づけられるもので、とりわけ原子力の長期低迷の影響を強く受けると考えられます。現状の化石燃料価格とFIT価格の乖離に囚われる必要はなく、むしろ再生可能エネルギーには相当程度のプレミアムが設定され、したがって徐々にその下限が近づいていると考えるのが妥当でしょう。