太陽光発電の価格が大きな関心事となっています。2018年度のFIT買取り価格はkWh当たり20円を下回るとの予想もあり、多くの関係者が動静を注視しています。FIT価格公表はこの時季の風物詩となった感がありますが、この時季に太陽光関係者は目先のFIT価格に一喜一憂しているように感じます。
事業の発展性を考える際、重要なのは太陽光発電の中長期的な価値です。
発電量1kWh当たりの価値を判断するには卸電力取引所の日々の価格が極めて重要な指標となります。季節・時間帯によって価格は異なりますが、例えば平成29年7月の平日昼間には概ね12円~20円で取引されています(需給が緩和する5月は8円~11円です)。
卸電力取引所の価格は電力会社の火力発電所の稼働状況によって決まります。具体的には、それぞれの時間帯に発電している最も効率の低い限界火力の単価が、事実上、発電単価を決定していると考えて良いでしょう。
この価格を決定する要素は大きく3つあります。
まずLNGに代表される化石燃料価格です。限界火力の熱源は地域・時間帯によって異なりますが、太陽光が発電する朝から夕方の時間帯は、現在ではほぼLNG火力と考えて差し支えないでしょう。したがってLNGのコスト動向が卸電力価格を大きく左右します。
次いで限界火力の熱効率です。最近では各電力会社ともにLNG火力のリニューアルを進めており、熱効率は上昇傾向にあります。一般汽力(熱効率41%~45%程度)、CC(Combined Cycle、熱効率47%程度)から地域・時間によってはACC(Advanced Combined Cycle、熱効率54~57%程度)が限界電源になっていると考えられます。
最後にベース電源の動静です。例えば原子力が再稼働する場合、電力会社の電源熱効率は大きく上昇します。最近では関西電力の高浜4号機が再稼働した2017年5月17日の前後で昼間価格(8時~22時)が0.8~1.0円程度低下した実績があります(5月15日・16日と18日・19日の比較)。
これらの要素はいずれも流動的で、全てを予測するのは不可能でしょう。差し当たり大胆な仮定に基づいて、現在のLNG火力発電コストを試算するとkWh当たり9円という結果※が出てきます。
※450$/t(LNG価格)×110円/$(為替)÷15,170kWh/t(発熱量) ÷40%(熱効率)÷95%(発電所効率)=9円/kWh
太陽光価格は長期的にこの水準に収束するのでしょうか?
そうはなりません。次回はその理由について考えたいと思います。