原子力発電の未来はどうなるのでしょうか?「国策民営」とはどういう意味なのでしょうか?
原子力の推進主体は電力会社です。そもそも民間が原子力発電を担えるのでしょうか。残念ながら答えはNOです。民間が主体となるには価格競争力が不可欠です。しかし3つの点から原子力発電=安価とは言えません。
まず高レベル放射性廃棄物の処理・処分にかかる巨額のコストがあります。困難な処分場決定、安全・安心確保に必要な材料・工法検討、超長期に亘るガラス固化体管理、いずれも想像を超える費用がかかるでしょう。
次に原子力災害に対する無過失無限責任の適用です。内閣府は2017年1月、巨大な原子力災害に対し、電力会社にこの原則を適用することを明らかにしました。これは巨額に上る原子力災害のリスクに限界を設けないこと、すなわち経済合理性の否定にほかなりません。
最後に運転期間の縮小です。40年(あるいは60年)原則の適用に加え、関西電力高浜原子力などに見られた司法リスクが顕在化しており、巨額の防災費を投入しても原子力発電の運転保証が得られないのが実態です。
これらのコスト・リスクは残念ながら、電力会社の財務諸表に反映されていません。原子力に経済性がある、という考えは成り立たないのです。
国が原子力発電を推進するのはエネルギー安全保障を確保するためです。原子力の経済性の有無に関わらず、原油・LNGを全面的に海外に依存する日本のエネルギー資源確保のため、原子力を推進しようとしているのです。この考えを簡単に否定することはできません。「国策民営」とは、このような国の基本理念を電力会社が肩代わりする枠組みです。
しかしそのためには、最終処分コストを含めた原価回収を保証する制度を作ること、原子力災害に上限を課し電力会社のリスクを限定すること、長期の運転を阻害しない環境を作ることが必要条件でしょう。
このような条件を満たさないまま、原子力発電を推進することは不可能でしょう。現実に原子力に参入する新電力はいません。今後、原子力発電所の新設は行われず、高経年化した既存発電所の廃炉によるスクラップのみが進むと考えられます。