ベースロード市場開設へ
ベースロード市場の開設がいよいよ迫ってきました。2019年7月より、旧一般電気事業者は原子力・一般水力・石炭火力を同市場を通じて新電力に販売することになります。
ベースロード市場は競争促進のために設けられます。電源調達に悩む新電力に、安価で安定的な電源を供給することがその目的です。特に電源の多くを卸電力取引所(JEPX)に依存し、猛暑・厳冬期などの価格ボラティリティに苦労する新電力は、大きな期待を寄せています。
価格はどうなるのか?
さて、問題となるのは価格です。電力会社は慎重に検討を進めてきましたが、概ね価格レベルについてはすでに意思決定を済ませています。電力市場の自由化当初から卸料金として常時バックアップの経験を積んできたこともあり、検討は比較的スムーズに進んだ模様です。
たとえば停止中の原子力設備から発生する固定費などもコストに算入される見通しです。この結果、新電力や国が期待するような低い水準にはならないと考えた方が良いでしょう。ベースロード市場に期待した経営計画を立てている新電力にとっては厳しい結果になりそうです。
JERAがワイルドカードに
例外はJERAです。東京・中部電力から出向している人材は料金実務を知らず、電源コスト検討の経験が浅いこと、また東電・中電双方の警戒心もあって相互に十分な話し合いができていないことから他社と比べると検討が遅れています。JERA経営企画部が電力中央研究所をはじめとするシンクタンクの力を借りて、検討の追い込みをかけてきたのが実態のようです。
周知のようにJERAは電力再編を目論む経済産業省と、首都圏のマーケット獲得を目指す中部電力、個人の生き残りをかけてこの構想に追随した東京電力の一部が創った巨大な火力発電会社です。ベースロード電源として活用できる首都圏の発電所は常陸那珂1,2号機(200万kW)、広野5,6号機(120万kW)の計320万kWです。
ベースロード市場の限界と発販分離
これらベースロード電源の供出価格を一定水準以下に留めるよう、JERAに対し、圧力がかかる(すでにかかっている)可能性が十分あるとみてよいでしょう。設立の経緯に加えて、横須賀火力(石炭)の建設中止を求める行政訴訟が提起されたことも重なって、JERAは国の意向に抗しがたい状況にあります。
しかしJERAの石炭火力の出力規模は小規模でベースロード市場の価格水準に与える影響は限定的です。新電力の競争力を補填するための市場開設の効果は、新電力が満足するような水準ではないでしょう。この結果、卸電力調達を巡る新電力の不満は解消されず、まだまだ経産省・新電力と卸電力市場をめぐる駆け引きが続くとみたほうがよさそうです。
この結果、ベースロード市場の価格水準に対する不満が、発電事業と販売事業の会計分離、ひいては法人格分離という、次のステップの要請につながる可能性が出てくると考えられます。