電力市場の間接オークションとは何か

電力市場の間接オークションとはどのようなものでしょうか。経済産業省、電力業界、市場参加者でも正しく理解している方はほとんどいないと言っていいでしょう。またWEBを検索しても経済産業省、広域的運営推進機関、卸電力取引所、残念ながらどこの資料も冗長で分かりにくいため、ここではできるだけ簡単にご説明します。

間接オークション=会社間連系線の利用ルール

間接オークションとは電力会社の会社間連系線(例えば東京・中部間の周波数変換設備等)を利用する際のルールの1つです。まずは従来のルールを振り返ってみましょう。

古くから電力会社は都市部よりも立地コストの安価な地方を中心とした広域的な電源開発を進めてきました。この結果、例えば東北→東京、九州→中国→関西、など電力会社をまたぐ潮流が不可避的に発生してきました。これら電源の潮流に対して優先的に会社間連系線を利用させ、残った余力の連系線容量を他の電源に利用させてきたのです。このように会社間連系線は、まず広域開発の電源にその優先利用を認め、余力をその他の不特定電源に開放してきました。

オークションによる連系線利用

余力の連系線容量は卸電力取引所(JEPX)のオークション参加者に開放されます。東京・中部間の周波数変換設備(FC)を例にとると、仮に中部→東京方向のFC余力が10万kW残っている場合、JEPXでは、この連系線余力の範囲内で取引を行います。かりにFC西側の電源価格が相対的に安い場合、取引所では西→東の潮流(=したがって西の供給超過、東の需要超過)は10万kWに制約されます。西側にこれを超える供給超過があっても、連系線余力の制約から潮流は10万kWに限定されます。この結果、いわゆる市場分断が発生し、西と東で価格差(この場合、西の価格<東の価格)が生じます。

間接オークションとは連系線利用を全てオークションに開放する仕組み

では、会社間連系線を特定の電源に優先利用させる扱いと、オークション参加者に利用させる扱いと、どちらが合理的なのでしょうか? 優先利用を排除し、全てオークション参加者に開放する方法が合理的だ、というのが現在の考え方です。オークションに委ねれば、その時点で価格の低い電源から約定し、連系線利用も経済性に優れた電源に順次開放されるため、というのがその理由です。これにより市場全体の最適経済性(いわゆるメリットオーダー)を達成できる、というのが基本的な考えなのです。

このように連系線利用を、従前のように特定電源に直接割り当てることなく、全てオークション参加者に開放し、取引の結果、約定した不特定の電源に割り当てるために「間接オークション」という(実に分かりにくい)表現となっているのです。

従来電源に対する激変緩和措置と展望

間接オークションは2018年10月1日より導入されています。とはいえ、古くから電力の広域運営、特に都市部の安定供給確保のために地方で開発されてきた電源に対して、救済措置(=激変緩和措置)がとられています。市場分断の結果、電源余剰の地域では単価が安く、電源不足の地域では高くなり、「供給側が受け取る単価<需要側が支払う単価」となってしまいます。この価格差によって生じる不利益について、JEPXから金銭補償を得る仕組みが激変緩和措置に当たります。

連系線利用を間接オークションに委ねることは、市場全体の電源可変費(つまり燃料費)を抑制する観点からは、理論的に正しいといってよいでしょう。このルールに従えば、その時点で熱効率に優れた電源や再生可能エネルギーが優先的に発電されることになります。その反面、設備費を回収する見込みは全く立たなくなります。いずれ設備が老朽化した際には熱効率が劣後し、オークションの結果、発電できなくなる可能性があるためです。したがって長期的視野にたった遠隔地への電源投資は困難になるのですが、最近ではこのような長期的配慮ではなく、短期の経済性を優先する政策が採られることが多くなっているのです。