経済産業省は1月9日、2019年度の事業用太陽光買取価格を14円/kWhとすることを決定しました。FIT買取価格は2018年度の18円/kWhから4円低下することとなり、事業用太陽光発電に対して大きなインパクトとなると報道されています。
なぜ14円としたのでしょうか?
今後、2,000kW以上(入札)の太陽光発電の上限価格や2020年度以降の買取価格はどうなるのでしょうか?
14円という水準は、12月18日に公表された2018年度下期の太陽光発電募集結果を反映したものと理解できます。この時の上限額は15.50円でしたが、最低落札価格は14.25円、落札合計出力は19.7万kWでした。つまりこの時の最低落札価格を買取価格としたわけです。このことは太陽光発電業界に対する強いメッセージ性をもっています。今後はFITといえども市場競争価格を上回る購入価格は設定しない、したがって実質的に補助金は拠出しない、という経済産業省の決意が感じられます。
このように考えるに至った背景として、まず太陽光が電力系統に与える課題が顕在化していることがあげられます。2018年度はまず北海道電力のブラックアウトの際に太陽光発電の供給再開が遅延しました。また九州電力で初の太陽光発電出力抑制が行われました。これらの課題に対する実務的な回答は見いだせていません。
また2019年度は消費税率上昇(8%→10%)が控えていることも重要な政治的要素です。すでにFIT国民負担は約3兆円(消費税率1%相当)に上っており、折にふれ批判的報道がみられます。夏の参院選後の増税を円滑に実現するために、予防的にこのような方策をとった可能性があります。
今後、入札上限価格や買取価格はどこまで下がるのでしょうか。
価格の下限として考えられる要素は2つあります。
まず卸電力市場価格です。まずは太陽光発電の増加によって焚き減らしされる火力発電コストが太陽光発電の対価となります。本稿ではガス火力の燃料費を参考に9円/kWhがJEPX市場価格の指標となりうることをお伝えしました。
次に2019年11月以降のいわゆる卒FIT電源の買取価格です。すでに新電力はこれら電源の買取価格を公表しており、現時点では10円、もしくはそれ以下の水準が一般的です。電力会社は2019年度明け以降に順次、その買取価格を公表するとしています。
今後の太陽光発電買取価格がこの2つの水準を下回ることは考えられません。これらの水準に環境プレミアムが上乗せされると考えて差し支えないでしょう。2019年度は対前年度4円の低下となり大きなインパクトとなりましたが、当面、今回のような大幅な価格低下はないものと考えられます。
ただし、中長期的に太陽光発電業界の方々が念頭に置くべきリスクがあります。電力会社は太陽光発電増加に伴い、徐々に石炭火力の出力抑制を余儀なくされています。つまり焚き減らし火力はいまや石炭電源に移りつつあり、中長期的には卒FIT電源を含めた太陽光発電の買取単価として、電力会社が石炭火力単価相当を主張する可能性があります。