関西電力は高浜3・4号機の再稼働を契機として、8月1日より電気料金の値下げを実施しました。大津地裁による再稼働停止の仮処分決定から約1年が経過し、去る大阪高裁の取消し決定により、漸く実現した値下げ率は全体で4.29%となっています。
大きな狙いは2つと考えられます。まず原子力が停止していた時期に、新電力(他エリアの電力会社を含みます)に奪われた顧客の奪回です。次いで関電ガス購入者の電気料金を値引きすることで、自由化された家庭用ガス顧客の獲得を加速することです。すでに大口電力顧客の争奪を巡って新電力も対抗し、2ケタを超える値引きも行われる熱い戦いが展開されている模様です。
この戦いの先に何が待っているのでしょうか?
関西電力の値下げに当たっては、あまり注目されていない、しかし重要な数字があります。それは需要の減少です。値下げの根拠として原子力稼働に伴う燃料費削減に加えて、同社のコストダウンが含まれています。したがって小売料金のみならず、託送料金も下がって然るべきですが、今回は据え置かれています。
その理由が電力需要の減少です。関西電力エリアの電力需要が約1割程度減少したため、コストダウンは行ったが託送料金は据え置かざるを得ない、というのが同社の説明です。
これは各電力会社が置かれている状況を率直に吐露しています。
電力需要が右肩上がりに上昇を続ける時代は終わりました。人口の減少や景気の長期低迷に加え、FITによる太陽光発電の拡大、LEDの普及、スマートフォン保有により、電力需要は長期的に停滞すると考えられます(電力需要の今後)。
したがって託送料金のみならず、小売料金も値下げせずに据え置きたい、これが関西電力の本音だったと考えられます。しかし原子力再稼働時の値下げが制度化されていることに加え、販売競争が極めて激化しているため、顧客奪回のために大幅値下げを余儀なくされているのです。
しかし市場はレッドオーシャンの様相を呈しています。お互いにコストダウンや固定費を割り込んだ値下げ競争を重ねれば、遠からず限界が来ます。体力を消耗する事態を回避し、収益基盤を電力販売のみならず、電設工事を中心とした周辺事業や新規事業に求め、自らの生き残りを模索することが正しい経営判断のはずです。