太陽光の衝撃

周知のように2009年の太陽光発電余剰電力買取り制度、2012年の再生可能エネルギー特別措置法による固定価格買取り制度の導入により、太陽光発電は急速に普及しています。現在では日本全体で約4千万kW程度の太陽光発電が導入済みです。

太陽光がもたらした構造的な意義を私たちは十分理解できているでしょうか?

太陽光発電が電力系統に与える影響については既に多くの点が指摘されています。需給に関わりなく天候次第で発電する太陽光の影響を吸収するため、調整力電源が従来以上に必要になっていること、既設系統と太陽光立地条件のミスマッチにより系統制約が顕在化していること、太陽光の保護機能特性により地域的に電圧フリッカが発生していること、などです。

ここでは従来あまり指摘されてこなかった、太陽光が発電設備の運用・コストに与える影響について考えてみます。

電力需要のピークは夏の猛暑期、または冬の厳冬期に発生します。夏は主としてエアコン用コンプレッサー、冬は暖房用電気機器に加え、照明・IHなどにより、需要がピークに達します。発電コストも、ピーク発生時に低効率発電所で高コスト燃料を燃焼させるためコスト高となります。

最近はこの状況に大きな変化が現れています。夏のピーク発生時には太陽光発電が稼働しているため、電力会社は高コスト火力を発電する必要がなくなっているのです。この結果、電力会社の時間ごとの発電コストには大きな変化が表れています。

日本卸電力取引所(JEPX)の30分ごとの発電単価をみてみましょう。太陽光発電が普及する以前、例えば2010年の夏の1日の発電単価は13時半から15時頃に最高値となっていました。しかし2017年7月現在では15時半から16時半頃に最高値を記録する日が多く見受けられます。太陽光発電の普及が進んだ結果、火力発電所の稼働が夕刻にシフトし、発電価格に影響しているのです。

電力会社の需給運用はまだ太陽光の稼働に十分対応しきれていない、と考えられます。太陽光発電の稼働予測が困難で保守的な見積もりにならざるを得ないこと、太陽光発電の導入規模、石炭・原子力などのベース電源規模に地域差があり、電力会社間で対応に相違があること、加えて揚水発電の貯水・発電時間を考慮する必要があることなどから、需給運用は今後さらなる経験を積む必要があります。

太陽光普及により、ピーク需要の夏冬バランスが実質的に冬にシフトすること、夏の発電コストのピークが徐々に夕刻から夜間にシフトすることを関係者は十分考慮する必要があります。発電所の定検時期が徐々に夏季にもシフトしてくること、現在は昼間に高い設定となっている時間帯料金が将来はフラット化することなど、設備点検・料金体系などに構造的な変化がおきているのです。