同時市場におけるシャドープライスとは何か?

わかりにくいシャドープライスの概念

同時市場の議論が進んでいます。需給調整市場と卸電力市場とを統合するアイデアであるため、議論が複雑になります。

難しい概念が数多くあるのですが、その一つにシャドープライスがあります。同時市場におけるシャドープライスとはどういうものか?簡単に解説します。

 

シャドープライスとは限界費用

まず結論を先取りすると、シャドープライスとは限界費用です。同時市場で需給が均衡した状態から需要が限界的に1単位増加した場合の供給側のコスト増がシャドープライスです。

なぜ「シャドープライス」という複雑な表現をとるのか?卸市場で取引される「限界費用」と何が違うのか?この点を解説します。

 

重要なのは「最も高い可変費が限界費用になるとは限らない」ということ

最低出力の制約を例にとって、数値で解説します。

1 一般的な限界費用

需要  電力量 300

電源1 電力量 160 限界費用 11円

電源2 電力量 140 限界費用 12円

これは一般的な状態です。この状態で需要が限界的に1単位増えると、電源2の供給量が増加するため、限界費用は12円となります。

 

2 最低出力の制約がある場合

需要  電力量 320

電源1 電力量 160 限界費用 11円

電源2 電力量 145 限界費用 12円

電源3 電力量  15 限界費用 14円

※電源3の最低出力は15(電源2の最大出力は150)

20の需要増に対応するため電源2の増出力では足りず、電源3が起動したとします。電源3の最低出力は15です。したがって電源3は15の電力量を発電せざるを得ません。一方で電源2には5の余力があります。

この状態で需要が限界的に1単位増えるとどうなるでしょうか?

そうです、電源2の供給量が増加し、限界費用は12円となります。

最も高い可変費は電源3の14円ですが、電源3は最低出力の制約があるため15の電力量を発電してます。この状態で限界需要に対応するのは、実は電源2となるため、12円が限界費用になるわけです。

ちなみにこのとき、現在の卸電力市場ではシングルプライスオークションにより卸価格は14円(電源3の限界費用)となります。

※単純化のため出力、電力量という言葉を厳密には区別してません

 

隠れているため「シャドープライス」と表現される

このように電源制約を考慮したときに、最も高い限界費用に隠れたコストが真の限界費用となる場合があります。上記の例でいうと真の限界費用(12円)が最高値の限界費用(14円)に「隠れているように」見えるのでシャドープライスと表現します。

シャドープライスとは、このようにごく単純な概念です。現在の電力市場の議論では分かりにくい表現が多々あります。海外の表現をそのまま使用していたり、官僚が造語を使うことなどが原因です。

当サイトでは今後も分かりやすさを重視して、解説を掲載していきます。