FIT電源のFIP転換(いわゆるFIP成り)が話題となっています。
FIP転換とは、太陽光発電設備に蓄電池を併設し、卸価格の安価な時間帯に充電、高価な時間帯に放電することにより、経済メリットを得て、同時に蓄電池の投資回収を早める経済的手法です。
尤も、FIP制度は複雑なため、FITからの転換により、どのような方法で経済性を達成するのか、理解しにくいと思います。以下では、FIP転換の具体的手法を説明します。
まずFITとFIP制度の違いを簡単に説明します(以下、分かりやすさを優先し、制度の詳細は省略してます)。
FITは再エネ電源の発電量を固定価格で買取る制度です(価格水準は運転開始年度で異なります)。これに対し、FIPは個々の再エネ電源が得る卸電力市場の価格に、一定のプレミアムを加算し、FITと同様の買取水準を維持する(しようとする)制度です。
(数値例)
A FIT電源の固定買取価格 :30円/kWh
B FIP電源の卸電力市場価格: 8円/kWh※
※各再エネ電源の平均的な発電パターンを前提に算定した価格
C FIP電源のプレミアム :22円/kWh(=A-B)
以上の算定式から、FIP転換した個々の再エネ電源は、発電パターンに応じた卸市場価格にプラス22円/kWhのプレミアムを加算されることになります。
ここで問題になるのは、FIP転換した個々の再エネ電源の卸市場価格がいくらになるのか、という点です。
そもそも(数値例)に上げた、FIP電源の卸電力市場価格=8円は、各エリアの全ての再エネ電源の発電実績に応じた卸電力市場価格です。
しかしFIP転換した個別の再エネ電源が、平均と異なるパターンで発電すれば、その電源が得る卸電力市場価格は、異なる価格となります。FIP転換した、ある電源の卸市場価格が12円だとすると、この電源は34円(=12円+22円)の価格で販売されることになり、FIP転換する前の30円と比較して4円のメリットを得られることになります。
ここで蓄電池の出番です。FIT太陽光設備をFIP転換し、同時に蓄電池を併設し、卸価格の安価な時間帯に充電、高価な時間帯に放電を繰り返すことで、発電パターンを大きく変えることができます。
これによってFIP転換した太陽光設備の卸市場価格を大幅に上げると同時に、プレミアム(数値例の22円)を得ることが可能なのです。
特に太陽光発電が抑制される時間帯に充電することのメリットは極めて大きく、蓄電池の投資回収を大幅に短縮し、その後も経済メリットを継続的に得ることが可能となるのです。
現在、九州など再エネ抑制が盛んな地域で進んでいるのはこのようなFIP転換(FIP成り)で、今後、再エネ抑制が地域的に拡大するとともに、このような動きは広がることが予想されます。
経産省は太陽光抑制を減らす観点から、蓄電池を活用したこのようなビジネスモデルを促進し、FIPを奨励する政策を採っています。今後、FIT電源のFIP転換が太陽光・蓄電池のビジネスチャンスになることが予想されます。