2024年度の容量市場は14,137円に決着

電力広域的運営推進機関は9月14日、2024年度の容量市場の約定価格が全エリアで14,137円/kW・年となったことを公表しました。上限価格(=14,138円/kW)とほぼ同水準の高値となったことから、新電力は強い衝撃を受け、環境大臣へ制度見直しを働きかけるなど、混乱がおきています。

なぜこのような高値がついたのでしょうか。大きな理由が2つあります。

まず原子力の応札量が704万kWと低迷し、このため供給曲線が大きく左方にシフトしたことがあげられます。

経産相は政治的背景もあり、オークション直前に稼働見通しが立っていない原子力の応札を抑制するよう、電力会社に強く指導しました。このため原子力の応札対象は、まず現在稼働中の9基(関西4基、四国1基、九州1基)に絞られました。次いでこの9基のうち、広島高裁で運転停止の仮処分決定(2020年1月17日)を受けた伊方3号と2024年に営業運転開始後40年を迎える川内1号が除かれ、この結果、わずか7基に限定されたと推察されます。

本来ならば、ゼロ円入札などの安値入札を行うはずだった原子力の応札が制限されたことが、今回の高値約定の最大の理由といって良いでしょう。

次にこの結果、高値応札を行った老朽火力が限界電源となり、約定価格を決めたことがあげられます。

これら火力電源は、本来ならば2024年度には停止しているはずの低効率の石油・LNG火力です。これら電源を供給力に加えるためには2023年度内に起動準備が必要となります。応札側は、この修繕費・人件費等を応札価格に反映せざるを得なかったと考えられます。

加えてこれら老朽設備には、約定価格から最大48%が割り引かれた対価しか支払われない(いわゆる経過措置係数です)ため、応札者はこの割引を予め勘案した高値で応札する必要があったわけです。

これら限界電源は14,137円/kW・年でも起動コストを賄い切れない可能性があり、2025年度以降の容量市場での約定継続を目指す等の手段により、中長期的なコスト回収を目指すことになると考えられます。

今回の応札結果で興味深いのは約定量が需要曲線上の調達量よりも約300万kW多く落札したことです。これは現実に14,137円で応札した電源が少なくとも300万kWあったことを示しています。大手事業者がまとまった電源をこの価格で応札したと考えるのが妥当でしょう。

容量市場のみならず、現在の卸電力市場、また検討が進んでいる需給調整市場は構造的に欠陥をかかえていると理解できます。

毎年1度のオークションで4年後の電源価格が決定され、しかもここに記したような要因により約定価格が上下にブレてしまうことに、売り手も買い手も強いリスクを感じています。電力市場設計はまだ洗練されてないため、ここ数年は今回のような混乱と制度の見直しが継続すると考えるべきでしょう。